実地指導自体はどの事業所にも平等に実施されるものであり、事業所の不正を暴くことを目的とした手続きではありません。もちろん実地指導で介護保険法や指定基準上の違反が発覚すれば、行政処分の対象になったり、受領していた介護報酬の返還を求められることもあり得ます。
実地指導の流れ、必要な準備、当日や後日の対応方法を知り、実地指導をスムーズに乗り切るための対策をしておきましょう。
実地指導の内容
人員基準
介護・福祉事業者は、職員の職種ごとの勤務時間や勤務体制が運営基準で明確に決められています。 生活相談員員、看護職員、管理者等の職種が必要人員要件に定められています。また、職員の育成のため、研修機関が実施する研修や当該事業所内の研修への参加の機会を計画的に確保することも求められており、この人員基準を満たしているかどうかに関する指導が入ります。
設備基準
施設の利用定員に応じて、サービスを提供する建物の広さや職員の配置人数が決まっています。サービス水準を維持するため、やむをえない場合を除き、利用定員を超えるサービス提供は行なわないことが義務付けられています。月平均のご利用者数が定員を超える場合、介護報酬の減算の対象となります。
運営基準
高齢者虐待防止のための取り組みの促進や、利用者のニーズに応じたサービス提供や計画作成がなされているか「運営指導マニュアル」を用いて指導が入ります。
報酬報酬基準
報酬請求指導は、報酬基準に基づいた実施体制の確保ができているか、一連のケアマネジメントプロセスに基づいたサービス提供ができているか、多職種との協働によるサービス提供の実施できているか等がヒアリングされます。各種加算について不適正な請求の防止とサービス質の向上を目指しています。自己点検シートを事前に事業者等に送付するため、必要な体制や実施内容が理解されるとともに、 適切なサービスが確保されるよう指導します。
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実地指導の流れ
通知の郵送・事前連絡
実地指導の1ヶ月から2週間前までに実地指導の通知が届きます。指導日は、行政からの事前連絡により指導担当官と事業所で調整します。
書類の事前提出
実地指導の1週間前を目途に事前に提出が必要な書類を提出します。事前に提出する書類は、自主点検表、運営規程、勤務形態一覧表、業務マニュアル等です。
当日の実地指導・ヒアリング
指導当日は一日をかけて行われます。当日の実地指導は、会議室など文書確認や質疑応答しやすい場所に決めておきましょう。人員配置基準の確認の資格証や運営基準の確認の契約書、計画書等の提示を求められる場合がありますので、事前に準備しておきましょう。
実地指導で違反が発覚するリスク
指導
勧告には至らない程度不適切な点があった場合や違反している点が既に改善がされようとしている場合は、口頭で改善を指導されたり、指導した点が実施されているか確認するために、後日書面が交付されたりすることがあります。
指導に従わない場合、違反の内容によっては改善勧告がされることがあります。
改善勧告
運営基準を満たさなくなっているような場合などに、改善するまでの期限を定めて是正を勧告されます。勧告を受けた事業所が、正当な理由がなく措置をとらなかったときは、都道府県知事から事業所に対して、期限を定めて措置が命じられる場合があります。
指定取消し
指定事業者の指定禁止事項に該当している、指定にあたって定めた条件に違反している、運営基準を満たしていない等が実地指導で発覚した際には、指定取り消し処分や一時停止処分が行われる可能性があります。
指定取り消し処分は、都道府県知事によるものですので、事業者側が行政訴訟で取り消し処分を無効にすることは非常に難しいことです。
指定取消しということにはならないよう、「実地指導があるから対策する」のではなく、日頃から「適切な事業所運営」を心がけましょう。
行政への対応が不安な方や、法令遵守した事業所運営について相談したいという方は、お気軽にご相談ください。
行政対応サポート
実地指導への対応
・提出書類のチェック
・指導に対する対応方法のご提案
法令遵守対応
・就業規則のチェック
・事業所運営の基準を満たしているかチェック