行政対応

介護事業所は、都道府県知事から指定を受けて介護保険法上の介護事業を行っています。

そのため、この指定がなくなってしまったり、指定の効力が停止してしまうと、介護事業所は介護保険法上の介護事業を営むことができなくなります。

指定取消し、指定の効力停止は、介護事業所に不利益を課す行政処分ですが、このような処分が行われるまでには、複数の手続が存在しており、処分を食い止めたり、その内容を軽減できる可能性のある手段も存在しています。

しかしながら、多くの場合は、手続の難解さ等から、効果的な対応ができないまま形式的に手続が進んでしまい、気が付けば処分が出され、取り返しのつかない状況となることがほとんどです。

当事務所では、指定の取消しや効力停止に関する手続きや、対策をお手伝いさせていただいております。

指定の取消・指定の効力停止についての基本知識

介護事業所は、都道府県知事から指定を受けて介護保険法上の介護事業を行っているため、この指定がなくなってしまったり、効力が停止してしまうと、介護事業所は介護保険法上の介護事業を営むことができなくなります。

指定の取消しとは?

指定の取消しは、まさに都道府県知事から受けた指定が取り消される行政処分であり、新たに介護保険サービス事業を実施する場合は、指定の再申請が必要となります。

指定の効力停止とは?

指定の効力停止は、一定期間、指定の効力が停止され、介護保険法上のサービス提供ができなくなる行政処分です。より具体的には、介護保険法上のサービス提供そのものは可能ですが、サービス提供に伴って本来支払われるべき報酬が支払われなくなります。

(1)指定の効力の「全部停止」

指定の効力の「全部停止」は、一定期間、指定によって認められている介護保険法上のサービスの全てが提供できなくなることです。

具体的には、既存の利用者、新規の利用者含めて、何らかのサービス提供を実施したとしても、これに対して介護保険法上の給付を受けることができなくなります。

(2)指定の効力の「一部停止」

一方、指定の効力の「一部停止」は、一定期間、介護保険法上のサービスの一部が提供できなくなることです。

具体的には、例えば「新規受入の停止」について効力が停止されれば、その間に新規の利用者を受け入れたとしても、当該利用者にかかる介護保険法上の給付を受けることができなくなります。

また、効力の停止の期間について、具体的な法令の定めはありませんが、その処分の理由に応じて、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の期間が設定されることが通常です。

指定の取消し、指定の効力停止がされたらどうなるのか

指定取消しによる5年間の指定居宅サービス事業所指定を受けられない

まず、指定取消処分を受けると、取消の日から5年間、新たな指定居宅サービス事業者の指定を受けられなくなります。

さらには、指定を取り消された者が法人である場合は、当該法人の役員であった者や当該事業所の管理者等による指定も受けられなくなります。

また、指定の取消しがされると、都道府県知事は、当該事業者の名称等を公示することになります。

各サービス毎の根拠条文は、以下の通りです。

 

指定の効力停止により介護報酬の受け取りができなくなる

指定の効力停止の場合は、効力停止の期間が終了すれば、介護保険法上のサービス提供を再開できます。

この間、介護サービスの提供自体は可能ですが、介護報酬を受けることができなくなるため、事実上休業をせざるを得なくなります。

そうなれば、効力の停止期間の利用者等の受入先を確保し、サービスの隙間が生じないようにしなければならないばかりか、そうなってしまえば、効力の停止期間が終了しても、事実上、停止前の状況に戻すことは困難です。

また、仮に事業を継続したとしても、指定の取消しの場合と同様に、指定効力の停止の場合にも、当該事業者の名称等が公示されます。

そうなれば、事業所の信用やイメージの低下は避けられず、利用者離れ等も発生する可能性があります。

このように、効力停止の期間等によっては、指定の取消しに匹敵するような影響を受けることもあります。

指定の取消し、指定の効力停止を防止するために

指定の取消し、指定の効力停止の原因

指定の取消し、指定の効力停止には様々な原因がありますが、主な原因としては以下の通りです。

不正請求: 介護報酬の不正請求
虚偽報告: 監査の際に報告等を求められて、これに従わなかったり、虚偽の報告をする
虚偽申請: 不正の手段により指定を受ける
法令違反: 法令に違反する
運営基準違反: 運営基準に違反する
虚偽答弁: 監査の際の質問に対して虚偽の答弁をしたり、検査を拒んだりする
人員基準違反: 人員基準に違反する
人格尊重義務違反: 要介護者の人格を尊重する義務に違反する

 

実地指導への対応

実地指導とは、法目的の実現のために、都道府県等の担当者が介護サービス事業所へ出向き、適正な事業運営が行われているか確認するものであり、以前は、「実地指導」との呼称でしたが、実地指導でのオンライン会議ツールの活用が始まるなど、必ずしも「実地」ではなくなるケースも発生することから、厚生労働省は、2022年度からその名称を「運営指導」に改めました。

運営指導は、定期的にどの事業所も対象となることから、運営指導が入ったからと言って必ずしも事業所の運営等に何らかの不備やその疑いがあると言うことではありません。

利用者からの通報

介護サービスに対して不満や不信感を持った利用者から、行政に対して通報がされ、これをきっかけに監査が入り、その際に指定取消し等に係る事情が発覚する場合があります。

職員からの通報

意外に多いのが、既に事業所を退職した職員等からの通報です。

職員の中には、退職理由に不満を持っている職員もおり、そのような職員が、内部の事情を行政に通報することがあります。

中には、単なる嫌がらせ目的の通報で、実際には原因となる事情が発見されない場合もありますが、中には、当該職員自らが不正等に関わっていた場合もあります。

このような場合には、内部事情なども事細かに通報されている可能性が高いので、事業所としても対応に苦慮することになります。

周辺住民からの通報

人格尊重義務違反や法令違反のうち、虐待等に関する事実は、周辺住民から通報されることもあります。

例えば、施設内から職員の怒鳴り声が聞こえる、散歩をしている利用者が怪我をしたり職員に怯えているなど、不審な様子が見えた場合には、周辺住民が行政へ通報をし、これに基づいて監査に入る場合があります。

実際には、内部の事情と外から見える事情が異なることは大いにあるものの、これらを端緒とした監査等の対応に、事業所が苦慮しているケースもよく見られます。

利用者、職員、周辺住民等からの通報については、私怨や嫌がらせなどの場合もあり、これによって事業所が監査等への対応を迫られることは珍しくありません。

もしも指定の取消し、指定の効力停止になってしまったら?

武蔵野経営法律事務所では、介護事業所で指定の取り消し、効力停止になってしまった際の対応を実施しております。処分が出された後、当該処分の取り消しが可能な場合もあります。

行政事件訴訟法に基づいて処分の取消訴訟を実施することでまずは処分が出される前にしっかりと争うことが肝要ですが、処分が出てしまった後は、行政事件訴訟法に基づいて処分の取消訴訟を実施する等、

各事業所の状況に応じた対応方法をお客様に寄り添って一緒に考えさせていただきます。

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